(小説)一期一会
夕方、帰路の大通りで少女に声をかけられた。
「すみません、お遣いで花屋へ行くんだけど、一人で怖いので、一緒に行ってもらえませんか?」だった。
ああ、この先に店番してるビーグル犬のいる花屋があったな、、、
と思いながら、
「いいわよ、どこの花屋へ行くの?」と聞くと、
「こっち」と大通りを横切った方だった。
あら、帰路と違うが、、、、ま、いっか。と、この少女のお遣いについて行く事にした。
「どんな花を買うの?決まってるの?」
「いつもお遣いを頼まれるの?」
「おうちは近いの?」
「いくつなの?」とあれこれ聞きながら、花屋へ向かう。でも結構な距離だった。
この少女は6歳で、寺の娘のようだった。お父さんに頼まれて、、、お供えの花を買うようだった。多分、お父さんは住職さんだろう。お父さんが一緒の時はいいんだけど、夕方帰りが暗くなると怖いから、人にお願いしてるの。と言っていた。
めがねにマスクの私によく声をかけたと思う。(笑)
少女は、首には防犯ブザーを携帯してた。それをいじりながら「上着着てくるの忘れちゃった。」と、はにかんだ。
「どこへ行くつもりだったの?」と聞かれ、「方向が違うけど、花屋までつきあってあげるよ」と言ったら、笑った少女。
「じゃあ、お店の前で待っててね」と、少女は買い物に慣れていた。
人通りも車も入り組んでる裏道だから、「車に気をつけるのよ。」「お遣い、偉いね」と私は少女の頭を撫で、別れ際に「じゃあね、バイバイ」と言って少女は寺へ帰って行った。
会話も出来るし、しっかりしてる。
こんなご時勢に、この東京で、、、と驚いた。
6歳の少女のお遣いをする善行と、怖いと思ったら無理せず他人の協力を得るという素直な心。
ちょっと感心しながら、6歳の子に教えられた気持ちになった。
通りに戻り、あの花屋のビーグル犬がやはり番犬してて、
挨拶して、心ほっこりして、私は帰った。
ちょっとした、日常の中のハプニング。
| 固定リンク | 0
コメント